日々是考察、本日の概念はセンスメイキング(sensemaking)。組織心理学者**カール・ワイク(Karl Weick)**が提示した考え方で、「組織は状況を正しく認識してから行動する」のではなく、行動しながら、その状況の意味を事後的につくっていくという、順序の逆転を指摘するものです。

マン・ガルチの火災——地図が壊れた瞬間

ワイクがこの概念を語るときによく引かれるのが、1949 年にアメリカで起きた山火事「マン・ガルチの惨事」です。消火に向かった精鋭部隊が、火の回り方の急変に直面し、统率も役割分担も崩れ、多くの隊員が命を落としました。

ワイクの分析が鋭いのは、原因を「情報不足」や「判断ミス」に還元しなかった点です。彼が見たのは、隊員たちが「自分はこのチームの一員であり、これは消火活動である」という意味づけそのものを失った瞬間でした。役割や手順という「地図」が状況に合わなくなったとき、人は地図を疑うのではなく、世界の見え方そのものを失う——そこに彼は組織の脆さの本質を見ました。

必要なのは、正しい地図を持つことではない。どんな地図でも、それを頼りに動き続けられること——動きながら、地図を意味のあるものに仕立て直す力だ。

「理解してから動く」の限界

私たちは普通、「状況を理解する → 計画を立てる → 行動する」という順序を当然だと思っています。しかし複雑で変化の速い状況では、理解できるだけの情報がそろう前に行動を迫られる場面のほうが多い。そこで足が止まれば、状況はさらに分からなくなる一方です。

センスメイキングの発想は、この順序を反転させます。**まず小さく動いてみる。動いた結果、何かが見えてくる。見えたものをもとに、次の行動の意味を組み立て直す。**理解は行動の前提ではなく、行動の産物だという見方です。

「理解してから動く」発想 センスメイキングの発想
状況把握が遅れると行動も止まる 行動が新しい手がかりを生む
「正しい地図」を待ち続ける 動きながら地図を描き直す
想定外が起きると思考停止する 想定外そのものを次の意味づけの材料にする

今日の一考

  • センスメイキングの核心は、意味は発見するものではなく行動の中でつくられるものだという逆転の視点にあること。
  • 不確実な状況での停止は、情報を待っているようでいて、実は意味づけそのものを止めてしまっている。
  • 「正しく理解してから動く」が効かない場面では、「動きながら意味をつくり直し続けられるか」が組織の強さを分ける。